微睡みの白昼夢


すれ違う、顔をしかめた大人たち。
太陽に燃やされた蒸気が、今にも目に見えそうなほど今日は暑かった。
日陰のベンチに腰掛け、夜のライブのことなど一切考えず、空白の時間を過ごす。
気づけば二時間ほど、眠っていた。
急に強くなりだした風が髪をさらう。
近くにあった大きな電気屋のトイレで顔を洗い、会場へ向かう。
ホームレスのような活動だな、と、自分を笑った。
これは、ここ1ヶ月ほどの記憶。
俺は、どこか遠くからやってきた見知らぬ少女に手を取られ、森の奥まで来た。
彼女は俺に何を言うでもなく、何をするでもなく、ただ、笑っている。
とても心地よくて、いつまでもここにいたくて、白昼の夢を見ている。
現実では時が流れ、相変わらず生活は狭苦しい。
俺は、何を守っていた?
君は、何に怒っていた?
そんな問いが絶えず頭の中を渦巻く。
どうやら、人生に関わる全ての事柄を、
平等に愛することは難しいみたい。
立川BABELに来るのはもう何回目だろう。
BABELは今年の8月で10周年らしい。
俺は多分5年前から訪れているから、
半分の歴史を共に歩んだことになる。
音楽を始めたのは14歳の時だった。
ゆずやコブクロに憧れ、親戚のおじさんにもらったアコースティックギターをかき鳴らした。
あの時のことはあまり覚えていないが、
毎日1曲、自分の曲を作っていたことを覚えている。
そのどれもがCから始まるコード進行だったことも。
俺は次の日学校が終わると友達を家に集めてその曲を披露した。
あれから、9年が経った。
初めてライブハウスに出た記憶も、
初めてレコーディングをした記憶も、
色彩のない墓場に並べられていく。
今日も昨日と違わず、
俺は、俺たちは、今を生きている。
夜行バスは23:50ちょうどに池袋を出た。
乗客は少ない。
明日も俺には俺の生活がある。
仕事へ行き、家へ帰り、飯を食う。
平坦な道を踏み固め、登りへ向かう。
時に下り坂を転がり、時に後ろを振り返る。
さぁ、こんなにも人生は美しい。
2018/6/26 24:11