TOKYO SLOW SKY


東京駅に到着する。
夜行バスの運転手には今日も愛想が足りてない。
さて、どうしようか。
ネットカフェに行くかどうか迷った。
空を見上げる。
「限りなく青く、深く、街のスピードに流されず、ゆっくりと進む空。
雲ひとつない、爽快な秋晴れ。」
俺は少し外にいたかった。
コンビニで弁当を買い、隅田川のベンチに腰掛ける。
隣のベンチでホームレスがもうボロボロになった新聞を読んでいた。 
俺やあんたには世の中の情報が必要?
政治も、経済も、トレンドも、それが嫌で"ここ"にいる。
ほどなく、そのホームレスの元に友達らしいのがやってきて、2人は穏やかに話をしていた。
それから1時間くらい、川を下るボートや近寄ってくるハトを眺めてボーッとしていたが、だんだんかったるくなって、結局ネットカフェで眠ることにした。
SUNRIZEに到着。
ここに来るのは7月ぶりだった。
いつものスタッフさん。
主催のモッフィーさん。
少しだけ懐かしい気がする。
1番近いSUNRIZEでの記憶は苦い。
浮かぼうとする足をしっかり掴み、
自分の言葉で、自分の話をしよう。
今日はどんな日になるかなんて、
やっぱり誰にも分からない。
あと10分で一番目のGhettoが始まる。
Vo.の鳩さんはまだフロアで笑って喋ってる。
それぞれの頭上を太陽が過ぎて行く。
JR 山手線 池袋行
今は…鶯谷駅についたところ。
車内では中国人か韓国人か、知らない言葉が大声で飛び交ってる。
今日のライブがどうだったかは知らない。
俺は俺のやることをやれたし、
他の出演者もそうだった。
俺や仲間は楽しい顔で酒を煽った。
こうして何かを考えていないと、
今にも電車で眠ってしまいそうなくらいに。
売れない物販をスーツケースに詰め込んで
仕事終わりに支度をして夜行バスに乗り込み
早朝の東京を彷徨っては、
ライブハウスに流れ着く。
イベントが終われば挨拶もそこそこに、
散らかした荷物を片付け、場を後にする。
そんな生活がもう3年続いてる。
疲労は数日で消える。
代わりに記憶が次々に積もっていく。
俺の生きた証は、俺の中にあり、
他の誰の元にも無い。
分かってほしいとも思わない。
数々の伝説を作ったバンドが、
自分達だけの道を歩んできたバンドが、
口を揃えて「ついてこい」という。
なんで?
自分と同じようになってほしい?
本当に、誰かについてきてほしい?
俺は、あんたらがそうだったように
自分だけの道を歩く。
自分だけの道を歩け。
表現がエゴじゃなくなったら、
聖者にでもなってみせる。
君に届く優しい歌は、
誰のことも、守ってはくれない。